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2020.09.29

Cayin A02開発秘話

Cayinが5つ目となるN6ii用オーディオマザーボードのアナウンスを行いました。
ユーザーから非常に評価の高いE01とE02のオーディオマザーボードはN6iiのラインナップを非常に強固にした理にかなったものであったと言えます。つまり、一度に一つのことにフォーカスすることで究極を求めました。その一方、多くのDAPが出来る限り多くのコネクター、フォーマットなどをサポートしようとしています。この点、E01やE02はそれぞれがただ一つのヘッドホン出力を持つという点において全く逆の方向を向いています。そして、A02は「ヘッドホン出力を一つも持ち合わせていない」という点において新たに大きな前進をしたと言えます。すなわち、お使いのイヤホンとの組み合わせにおいてA02を使用することは出来ませんが、切替可能なラインアウトとプリアウト端子を持ち(プルダウンメニューから行います)、しかもそれが3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス端子の両方において使用可能になっています。これにより、N6iiはポータブルヘッドホンアンプ、アクティブスタジオモニター、インテグレーテッドアンプ、ホームオーディオシステムのパワーアンプなどに接続することが出来る高品質なアナログソースへと変貌を遂げます。先程申し上げた通り、ヘッドホンを直接ドライブすることは出来ませんが。

A02は2つのPre/Lineout出力を有します(3.5mmと4.4mm)

【馴染みのあるデジタル・オーディオプラットフォーム】
A02オーディオマザーボードは、2つのAK4497をモノモードで動かすN8と同じアーキテクチャーを採用しています。また最初のオーディオマザーボードであるA01でも採用されいている信頼ある高品位のDACチップセットと言えるでしょう。AK4497が実現するとてつもない解像度と密度は非常に印象的で、私達の考えとして、A02の目的にはAK4497が最良の選択と考えています。
デコード能力はA01オーディオマザーボードと基本的に同じです。DSD最大256(1Bit/11.2MHz)及びPCM最大32Bit/384kHzまでデコードすることが可能です。

【ラインアウトとプリアウト】
Cayin N6iiのユーザーの皆さんはきっとラインアウトについて既に馴染みがあることでしょう。E02を発売した際、増幅されていない4.4mmバランスラインアウトについて活発に意見がかわされ、また多くのフィードバックをいただきました。多くのユーザーがE02の3.5mmシングルエンドのラインアウト出力を実現させるために4.4mm to 3.5mm変換アダプターを入手していました。A02に関する良いニュースとしてアダプターを必要とせずに3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスのラインアウト出力を使用できます。A02マザーボードはヘッドホン出力を全く持ち合わせていないため、贅沢なことに3つのラインアンプを有し(1つは3.5mm、残り2つは4.4mmへ)、この目的のために最適化を行っています。
また、A02はポータブルDAPの中では「超」高品質のラインアウトを持っているDAPということが言えるでしょう。ラインアウトへの出力レベルの選択ができるようにしています。そのため、ユーザーは接続されたアンプのゲインレベルに関して常に最高の設定を行うことが出来ます。Lineoutの設定からHigh, Mid ,Lowを選択が可能です。関連する出力レベルの情報に関しては下記の表を参照して下さい。

A02の別のユニークな特徴はプリアンプ出力を持つことです。おそらく私達が知る限りでは、このような機構を有する初めてのポータブルDAPだと思います。A02の出力端子のどちらについてもラインアウトかプリアウトの選択をプルダウンメニューから行うことが出来ます。

そもそもプリアンプ出力とは何かという話です。ラインアウトと何が異なるのか。端的に言えば、ラインアウトは出力レベルが固定されおり、ボリュームコントロールの影響を受けません。一方、プリアンプ出力の場合、ボリュームコントロールを通じて出力レベルを変更することが可能です。言い換えると、ラインアウトは可変出力デバイス、すなわちボリュームコントロールがある機器に接続すべきで、またプリアンプ出力はゲインが固定のオーディオ機器(例えば、パワーアンプ、パワードスピーカー)に接続するべきと言えます。

ボリュームコントロールに加えて、これら2つのオプションの出力レベルも変更されることがあります。多くの場合、ラインアウトは、バッファー付きのDAC(やLPFの場合もあります)からの出力であることがほとんどでゲインはほぼないか、わずかにあるに過ぎません。
プリアンプは異なるブランド間で、あるいは同じブランドでも異なるプロダクトラインナップ間においても大きく異なります。過去に最大出力4Vという低い数値を謳うプリアンプを見たことがあります。また別のケースでは最大出力が20+Vというものも。A02の最大出力はそれぞれ8.2Vrms(4.4mmバランス出力)と4.2Vrms(3.5mmシングルエンド出力)となります。ポータブルデバイスとしては、比較的高い出力を実現していると言えるでしょう。つまりホームオーディオシステムの異なるパワーアンプをミックス、そしてマッチングさせるのに十分なゲイン(また、ボリュームコントロール出来る柔軟性も)を持ち合わせています。さらに一方では、4.4mm to デュアルXLRバランスアダプターを使用して、A02のプリアンプ出力から例えばATC SCM19A(ホームオーディオシステム)やDynaudio BM5 MK3(デスクトップシステム)といったアクティブスピーカーを直接ドライブすることも可能です。

これらの特徴を正確に実装するために、A02のプリアウトは専用ラインアンプを使用しています(ラインアウトから独立)。再度この点を申し上げおくと、A02には3つのラインアンプを使用しており、1つは3.5mmシングルエンド、残り2つは4.4mmバランス出力用でそれぞれがプリアウトのために特別に最適化されています。さらに、A02で使用しているAK4497に搭載されるデジタルボリュームの代わりに、JRC(新日本無線)製の低ノイズ・低歪み性能を誇る4チャネルの抵抗ラダー型電子ボリュームコントローラーを採用しています。これにより、ボリュームレベルが低い場合でも、プリアウトのダイナミックレンジは非常に優れたものになります。

ユーザーが選択可能なLPF(ローパスフィルター)
A02にはヘッドホンアンプの回路を考慮する必要がないので、オーディオマザーボードの新しい可能性を探ることが出来ました。特にこの試みとして、2つの特徴的なLPFを取り付けています。DSD LPFは3次RC(レジスタとキャパシタ)フィルター、PCM LPFは2次RCフィルターとして。DSD LPFはPCM LPFと比べると高域においてよりシャープな点を特徴とします。私達がこれをDSD LPFと呼ぶ理由は、アナログ回路にDAC出力を送る前にDSD音源に対する過剰な高周波ノイズをうまく制御することが出来るからです。

DSD音源にDSD LPFを使用することは決して絶対的な条件ではありません。またPCM音源に対してPCM LPFを使用することも同様です。このことは知っておいて方が良いでしょう。
N6iiにA02を装着した後、プルダウンメニューから3種類のLPF設定があることを気付くはずです。すなわちAuto, DSD, PCMです。Autoを選択すると、現在再生中のフォーマットに対して自動でプリセットされたフィルターを適用させます。もちろん、DSD LPFあるいはPCM LPFを手動で選んでいただくことも可能です。高域のレベルをコントロールすることで、お好みのサウンドを獲得することが出来るでしょう。T01オーディオマザーボードは3次LPFを使用しており、A01,E01,そしてE02は2次LPFを使用しています。それゆえ、これは非常に重要ですが、3次が2次より優れているとか、またその逆ということは全くありません。これは単なる最適化の問題であり、A02マザーボードにはスペースに余裕があったため、ユーザーが選択できるLPF設定を設けることが出来たのです。

A02オーディオマザーボードのPCBA

A02オーディオマザーボードのフレームワーク

A02を搭載したN6iiはヘッドホン出力がありませんから、これはCayinにとってもかなり大胆かつユニークな製品になります。通常の形式を採用するDAPではまず見ることが出来ないスペックなのは間違いありません。モジュラーデザインを採用するN6iiだからこそトライすることができた非常にイノベーティブなマザーボードであると言えます。ですが、パーソナルオーディオというニッチなマーケットの中のさらにニッチなカテゴリーになるため、全てのN6iiユーザーがA02を必要とするかは非常に懐疑的です。 N6iiを発表したときに、「無限の可能性」をキャッチフレーズに掲げました。その点で言えば、A02はN6iiの可能性を更に広げるものであることは間違いないでしょう。

特殊な専門性を有するオーディオマザーボードであることを考えると、需要は限定されると考えています。そのため、まずは500個の生産ロットのみを考えています。日本での価格はまだ決まっておりませんが、10月末までには発売をしたいと計画しています。

そして最後にA02以降のオーディオマザーボードについてネット上での噂が散見されます。N6iiのオーディオマザーボードの開発にあたっては、満足の行かない品質のもの、またCayinが提案すべきでないと考えるものは現実とはなりません。また開発には、常にリスクが表裏一体としてあり、開発途中で頓挫したマザーボードは既にあります。そういう意味からすれば常に最新のマザーボードが最後のマザーボードになる可能性はあります。

ここで本国からのメッセージを掲載したいと思います。
A02以降、オーディオマザーボードの開発計画はありません、非常に革新的、また実行可能なアイデアが出てこない限り。

Cayin
Never be the same again